老いらくの社会科

日本に暮らす老日本人生活者が社会について思うこと

派遣と強制労働との共通点

休日に外を遊びまわる子供の声が本当に少なくなりました。それがいつだったかははっきりしませんが、ある年を境に急激に少なくなったような気がします。

少子化の原因は経済でしょ

さて、この少子化の一番の原因ですが、単純に経済問題だと思います。

私が退職後にパート勤務に就いた時、30代、40代の男性らがやはり同じようにパートやアルバイトで勤務していました。その多くは派遣会社を通しての派遣社員です。

ご存じのように、派遣社員の給与は一般社員に比べて割安であり、加えてボーナスの支給はありません。そして、一般社員が年々昇給したり、出世する可能性があるのに対して、派遣はどんなにスキルが向上しようが、社員よりも熱心に仕事をしようが、職位が変わることはなく、時給は固定です。そして、通常は三年でお役御免になります。

一旦派遣社員として勤め始めたら、そこから脱するのは容易ではなく、派遣社員として働けなくなるまで務めることになります。

30代、40代の独身男性(中には女性も)が単純労働に就いているのは本当にもったいないことだと思います。

企業に都合の良すぎる派遣制度

誰も派遣社員になりたくてなっているわけでは決してありません。

この派遣制度ですが、必然的にできたものとは言え、あまりに企業に都合の良すぎる制度だと感じています。

結局のところ、派遣社員である限り、結婚するための資金を蓄積することは容易ではなく、仮に派遣社員同士で結婚したとしても、子育てするための経済的な余裕に乏しいのが実情です。

子育てが難しいとなると、結婚そのものに二の足を踏んでしまう人も少なくないと思います。

派遣と強制労働の共通点

ウイグル人に対する迫害が問題となっています。強制労働に加えて、虐殺や臓器売買、不妊手術などが行われているようですが、日本で暮らす我々にできることは、どうにかこうにか現場から逃れてきた人たちをかくまうのがせいぜいで、大したことができないのが心苦しいところです。

迫害や民族浄化などの国際的な犯罪行為についてはここでは触れず、強制労働に目を向けます。

恐らくウイグルの強制労働は生かさず殺さず、自由のない監禁状態で無給で働かされているものと想像します。

ウイグルの労働条件は犯罪であり、全くもってお話になりませんが、結果だけ見てみると、派遣社員もまたこの境遇に近いものがあります。経済的に生かさず殺さず、結果として子孫を増やすことができません。

派遣制度という名の民族浄化制度なのではといぶかってしまいます。

年代によって就職状況が大きく異なる

30代、40代の派遣社員が多かったというのは確かな話ですが、多くは団塊ジュニア世代です。次に多いのが50代で、彼らの多くはリストラで職を失っています。

リストラの場合は、同業他社の同ポジションに空きがある場合は、意外とすんなり就業できる可能性があります。

しかし、団塊ジュニアの場合はそうはいかないようです。

日本の場合、中途採用される人の多くは専門職です。多くは同業他社で専門職として勤めてきた人が募集対象です。そのため、中途採用される派遣社員は非常にまれです。派遣の仕事では、ゼロから育てられた一般社員なみのスキルを身に着けるのはなかなか難しいのです。

また、新卒はある程度安定した数が採用されますが、同世代人口が多い場合、どうしてもあぶれてしまう人たちが発生してしまいます。新卒で採用されない場合、その後の就職がさらに大変になります。

働き盛りと言っていい30代、40代が派遣のような低所得の単純労働に就いていること自体、日本全体の経済にとって大きなマイナスと感じます。

派遣会社と専門学校、専門職養成大学を合体させてはどうか

勉強を頑張り、よい大学に入って、よい企業や国の機関に勤める。

典型的な成功パターンのひとつです。決められた線路の上を走らされているようでつまらないと感じるかも知れませんが、少なくとも経済的な余裕や安定を得るための公式としては成立しています。

もちろんこの公式にとらわれず、自由な発想で自らビジネスを興し、成功させている人たちも少なくありませんので、自由を求める人は自ら動けばいいでしょう。

ただ、一般メーカーに憧れ、そこで設計したい、デザインしたい、営業したい、という人たちも少なくないと思います。メーカーや大企業でないと実現できない製品やサービスも少なくないからです。

そうした年代や社会情勢によってどうしてもうまく就職できない若い世代の人たちが、いつでも戦力として登板できるようなシステムがあればと思います。

そこで、ピンハネだけが目的の乱立する派遣会社と専門学校や専門職養成大学とを合体させてはどうかと考えました。仮にこれを人材派遣大学と呼びます。

派遣社員兼学生は、派遣で勤めて給与を得ながら一般企業の社員、特に専門職レベルのスキルや知識を常に学べるようにします。新卒で就職した社員が得られる知識やスキルと同程度の学びが得られるようなプログラムを用意します。社員と同等のパフォーマンスを保証することで彼ら、彼女らは即戦力として企業に中途採用される機会が増える可能性が高まります。

学費は免除が理想です。その原資は企業からの基金などで運用できないものかと思います。優れた人材をいつでも派遣してもらえたり、社員にできるとなれば、投資する価値はあると思います。

講師は、一般企業で専門職として勤めていた経験のある人たち。リストラされた専門職の受け皿にもなります。あるいは現役の社員でもいいでしょう。

こうしたいつでも使える専門職が増えると、結果的に今勤めている従業員の待遇が悪くなってしまう可能性があります。そこで、人材派遣大学は、安く人材を提供するのではなく付加価値のある人材の提供を目的とし、賃金交渉がきちんと行える機能を持たせられたらと思います。派遣社員、現役社員の双方に有利、不利が発生しないように調整できることが理想です。

このビジネスモデルって、派遣会社というよりも経営コンサルティング・ファームっぽくないですか?

原稿を書きながらそう感じました。