老いらくの社会科

日本に暮らす老日本人生活者が社会について思うこと

ChatGPTに乗り遅れるな、というプロパガンダ

AI全盛期の到来か?

イラストを描き始めて4年半になりました。相変わらず、つまらない絵を描いています。

絵を描いていると、当然ながら流行りのAIについての情報が否が応でも耳、いや目に入ってきます。この1年ほど前からPixivにも多くのAIが生成したイラストがアップされ、イラストレーターが描いた絵の数を凌駕する勢いです。

そんなわけで、AI生成サイトのひとつを試しに使ってみました。いくつかのキーワードを入れるだけで、わずか数秒ほどで複数案の候補を出力してくれます。一見するとスゴイ技術に感じられます。

AIって、基本的にコピーじゃないの?

イラストAIや文章で返してくれるChatGPTなどの会話型AIの中身ってどうなっているんでしょう。

そこでMicrosoftのBingChatを使い、

「会話型AIの学習方法について教えてください」

と聞いてみました。

その答えが以下になります。

会話型AIは、大量のデータを学習し、自然言語処理技術を使用して、ユーザーと対話することができます。 会話型AIは、機械学習アルゴリズムを使用して、ユーザーの入力に応じて自己学習します。 これにより、会話型AIは、時間の経過とともにより正確な回答を提供できるようになります。 IBMのWebサイトによると、会話型AIは、発話やテキスト入力を認識し、複数の言語のあいだで翻訳・通訳を行うことができます1

また、ChatGPTはインターネット上の膨大な情報を学習しており、すぐに回答を提示することができます2

このように、会話型AIは自己学習することで、時間の経過とともにより正確な回答を提供することができます。

だそうです。

WEB上の情報から文章を組み立てているようで、参照したサイトがリンクされています。

「大量のデータを学習」とありますが、コンピュータであれ、個人であれ他の人が作ったデータをそのまま使う場合、それってコピーってことじゃないんでしょうかね。機械による機械学習とは、一旦100%完全な情報を取り込むということであり、その部分については単なるコピーとしか思えません。

もちろん、人間が学習する場合も、コピー、あるいは手書きで丸写しすることはしばしばありますし、あくまでも個人的な使用範囲であれば問題ないことになっています。

問題になるのは、商用、あるいは自分のものとして公開する場合です。

今のところAIが出力したものは、パブリックドメイン(誰もが自由に使えるもの?)となっているようです。他人の作品をコピーした可能性がある上にパブリックドメインと言い切るのもどうか思いますが。

ところが、出力したものを自分の作品と勘違いしている人もいるらしい。

AI絵師という摩訶不可思議な存在

AIを使って画像を生成した方の中には、自身をAI絵師と名乗っている方がいるとかいないとか。もしそれが本当なら、出力したデータを自分の作品だと思っていることになります。絵師というのは自分自身で絵を描く人のことですから。

自身が描いていない上に、AIの学習方法に疑問点がある今、生成したものを自分のものとして公開するのには無理があるように思います。

仮に公開したとして、AIが作った著作権フリー素材ということで無償で誰でも使えるものとして公開するしかないように思います。

仕事の補助データとしては使える?

文章にしても、イラストにしても、制作者は制作時に多くの情報を収集すると思います。

資料の中には著作権のあるもの、著作権フリーのものが混在します。著作権フリーのものについては、一部あるいは全部をコピーし、あるいは加工して用います。その方が作業が早いからです。

著作権のあるもの、あるいははっきりしないものについては、そのまま使うわけにはいきません。参照することは可能ですので、イラストであれば、スケッチの素材に用いたり、構造の理解のために用いるといった範囲に留めます。

AIが生成した文章にしても画像にしても、元の情報に著作権があるかどうかが全くわかりません。わからないだけに、著作権のあるものとして補助的に用いるしかないように思います。

著作権違反行為を学習という言葉に置き換えている

情報処理技術が発達し、人間生活の向上に役立ってくれることについては大歓迎ですし、イラスト作成の補助機能として是非使いたいと思っています。

ただ、私的にはどう見ても著作権違反という犯罪行為を「学習」という一見するとキレイな言葉に置き換えているだけな気がします。著作権ロンダリングですね。

そうして、クリエーターらのクリエイティブな部分がなし崩し的に踏みにじられていくように感じられます。

こうした運用では、いくら新しい表現や技術を生み出したとしても、生み出した人間にはろくに利益が還元されません。

オリジナル表現を売り出したいなら、我社のシステムに登録して、AIに採用されたら少しだけ分け前をあげよう、てな具合に首根っこをつかまれる可能性もあります。

自分の立場を利用して優れたクリエイティブな人間を支配したくてしょうがないのでしょうか。

つまるところ、誰かを働かせて上前をはねるシステムに見えます。

何のことはない、それが目的なんでしょうかね。

そんなわけで、私からすると、ChatGPTをはじめとする「会話型AIに乗り遅れるな」は、どうにもプロパガンダにしか聞こえません。

問題点が明るみに出る前に、とにかく大多数の人間にまずは使わせる。大多数が当たり前のように使うようになってしまえば、後戻りするのが難しくなります。

「今更著作権とか言われてもねえ・・・」

てな具合に。

コンセプトはロボットと同じ

未だに完全なものができていない人型ロボットについては、事前にロボットの振る舞いについてのルールが定められています。例えば人間に危害を加えないように、というような最低限の禁則事項です。

AIについても同様のルールが必要なはずです。

イラストの場合、著作権に抵触する可能性のある入力表現を禁止しなくてはならないと思います。

例えば名のあるイラストレーターの名前〇〇を入れて「〇〇絵師風」というような入力は禁止すべきではないでしょうか。

絵師の絵を特徴づけているのは絵柄であることが少なくありません。「〇〇絵師風」と入れて、特定のイラストレーターの絵とそっくりな絵が出力されてしまっては大きな誤解が生じます。人間が真似をしたらパクったと批判されるような事例は禁止しなくてはならないのではないでしょうか。

AIを解禁する前に、こうした想定できる問題に対処しておく必要があるはずですし、リリースする人間もそのへんのことはよくわかっていると思います。

つまり悪意をもってリリースしていると個人的に妄想していますし、想像以上の問題が恐らく生じるであろうことを危惧しています。